https://www.google.com/maps/d/embed?mid=1uUsY3Ds7lDpXtI6bCplZfJaYcfvYpFB3&hl=ja大阪手打ち(大阪締め)とそれに準じた手締めのうち、存在が分かったものだけですが地図に表しました。
氏神神社・宮入神社、山車の倉庫・公民館・集会所等、手打ちが行われる場所のいずれかにピンを置いています。
標準的な大阪手打ちを行うところは分布がある程度分かるくらいの数だけピックアップし、あまり積極的にはピンを置いていません。(大阪市だけでいくつになるか分からない)
可能な限り手締めが行われている動画へのリンクを記載しました。
分布の傾向
大阪手打ちとそれに似た手締めは大阪府とその周辺、及び福岡県とその周辺が二大分布域であり、それらの中間地域(瀬戸内)と大阪地域以東にもいくつか見られます。
大阪中心部と福岡県地域と瀬戸内地域(播州より西)では「うちまーしょ、もひとつせ、いおうてさんど」の標準的な形かそれに近い手打ちがほとんどであり、大阪周縁部では手拍子をしながらの「おっしゃかしゃん」型のものが見られます。
頻繁に手打ちをするのは大阪中心部と福岡県直方市周辺で、祝儀御礼や山車の顔合わせ、巡行終了などで手打ち・打ち込みが行われます。
大阪周縁部では行事の終了時の締めとして手打ちが行われる傾向にあります。
2018/5/10追記:和歌山県日高町の比井祭りの手打ちが大阪手打ち系のものだとわかりました。これで近畿2府5県すべてで確認されたことになります。また当地にはだんじりもあります。
以下、地域ごとの傾向について書いていきます。
☆大阪府とその周辺
大阪府、京都府、兵庫県、奈良県、三重県、滋賀県、福井県に見られます。
・大阪府
泉州北部と南河内を除く広い地域に分布しています。在阪の経済団体の集会、私的な宴席でも打たれます。
天神祭では祝儀御礼、祭りの始まりや締め、船渡御でのすれ違いの時、他の講との挨拶などで頻繁に手打ちが交わされます。地車祭りにおいては天神囃子系の祭りでも天神祭と同様に頻繁に手打ちが交わされます。中河内に多い布団太鼓祭りでは担ぎ納めや蔵入れといった巡行終了で打たれることが多いです。
泉州南部のやぐらという山車が分布する泉南市や阪南市でも「おっしゃかしゃん」という掛け声を含む手打ちが分布しており、主に祭礼終了に打たれます。
・京都府
主に京都市内の祭りで神輿の担ぎ始め、担ぎ納めで打たれることが多いです。また祇園祭の北観音山の巡行終了時や千本ゑんま堂大念仏狂言の最後でも打たれます。大阪手打ちが多少変形していることもあります。祇園祭の三若の手締めは愛知県や鳥取県へも伝播しています。
・兵庫県
兵庫県は摂津と播州が二大分布域です。
・摂津
武庫川以東、尼崎市や伊丹市で見られます。特に尼崎の城下町とその周辺では拍手が3拍のものが広まっています。
西宮市~神戸市の平野部では大阪手打ちは見られません。
宝塚市や伊丹市では大阪手打ちとは異なるこの地域独特の祝儀手打ちがあるようです。
・播州
播州では比較的広範囲に大阪手打ち型の手締めが分布しています。高砂神社、上之荘神社などではほぼ原形の大阪手打ちが手打ち式や屋台の打ち別れで打たれます。
三木市では多くの町で屋台を担ぎあげる時の掛け声としてほぼそのままの形の大阪手打ちの掛け声が導入されています。
福崎郡、加西市、神戸市西区、明石市などでは屋台の打ち別れや蔵納めで打たれます。福崎郡ではさらば唄とセットであることが多いです。サラバ唄とは「さらばさらば笹のは、よう来たよの葉、また来い松の葉」という歌詞を基調とした唄です。
・奈良県
奈良盆地の南の方から山地にかけて散在していますが、「おっしゃかしゃんのしゃんしゃん」かこれに似たフレーズがほとんどの地区で含まれています。7か所で確認しましたが、分布域の広さから他にももっとたくさんあることでしょう。また地車祭りや太鼓台祭りではない行事で行われているものが多いです。綱かけ行事やとんど(左義長)など。
・三重県
3か所で確認していますが伊賀と中勢(伊勢中部)と北勢(伊勢北部)にそれぞれ1か所ずつであり、伝播経路がいまいち分かりません。
三重県多気郡明和町の大淀祇園祭と似た祭りが伊勢市東大淀町、伊勢市村松町にもあって、もしかするとそこにも同様の手打ちがあるかもしれません。
・滋賀県と福井県
それぞれ1か所ずつで確認しています。距離は離れていますがどちらも掛け声がほぼ同じです。ウェブ上に資料がそもそもほとんどないので書籍を総当りするか、現地聞き込みを本気ですれば他にも見つかりそうです。滋賀県の湖北で盛んなオコナイとかの行事を総当り調査するのは個人には無理ですね。
【追記】2018/3/26
滋賀県長浜市の川道町のオコナイでは氏子各組が神社に鏡餅を担いで奉納するのですが、拝殿に鏡餅を収めたときの掛け声が「オッシャンシャンノシャントコセ、もひとついおうて、オッシャンシャンノシャントコセ、まだまだいおうて、オッシャンシャンノシャントコセ」であり、これは大阪府阪南市の自然田周辺のおっしゃかしゃんとほぼ同じものです。
直線距離で140km離れた土地で同じ掛け声が、餅の奉納後とやぐらの収納後、つまり行事の締めという似たような状況で行われている事実は、これら2つの土地の間の地域(のどこか)でも同じ掛け声がかつて行われていた、あるいは今も行われているとみていいと思います。しかし間の地域が広すぎてこの掛け声の発信地・中心地が京都なのか大阪なのか分からないですね。
長浜港にほど近い田町と川道に大阪で見られる手打ちが伝わっているのは、長浜は琵琶湖舟運を通じて上方と中山道を繋ぐ内陸水運の重要な港(彦根三湊)の一つだからでしょうね。なのでこの辺りを探せばまだまだありそうです。
動画リンク
→川道のおこない
https://youtu.be/UAmtNjz-56M?t=3m28s→自然田上組のおっしゃかしゃん
https://youtu.be/bKox5DhRzVI?t=16m53s☆福岡県地域
博多周辺では博多祇園山笠や筥崎宮玉せせりなどで博多手一本という手締めがポピュラーであり、経済団体の会合や私的な宴席などいろいろな場面で手締めが行われます。鳥栖(佐賀県鳥栖市)や芦別(北海道芦別市)など博多祇園山笠の祭りの様式を模倣した祭りでも博多手一本が行われます。博多祝い唄とセットで行われることが多いのも特徴です。
筑後川流域の久留米市、うきは市、朝倉市などでは獅子舞が厄除けのために家々を回る打ち込みという行事があり、手締めが行われます。うきは市の吉井祇園など山笠と獅子舞の両方が出る祭りでも打ち込みが行われます。筑後川の上流の大分県九重町や玖珠町では天神囃子系のお囃子が伝わっていますが、大阪手打ち型の手締めは行っていないようです。
遠賀川流域の直方市を中心とした地域では山笠が祝儀御礼などで手締めを行います。これを打ち込みと言います。また遠賀川流域でも直方で合流する支流の彦山川が流れる田川郡方面では行われていません。
戸畑や小倉などの山笠祭りでも打ち込みは行われますが、手締めではなくお囃子を披露する形です。また長崎県の長崎くんちの打ち込みも芸能(の一部)を披露する形で手締めはありません。
大分県でも大分市三佐地区、臼杵市で大阪手打ち型の手打ちを確認しました。
☆瀬戸内地域
山口県、広島県、愛媛県、徳島県の沿岸部・島でいくつか確認されています。文言に多少の違いがあるものもありますが、標準的な大阪手打ちに近い形が伝わっています。
おっしゃかしゃん型の手打ち
「おっしゃかしゃんのしゃーんしゃん」みたいな感じの手打ちは大阪中心部から距離が離れるにつれて見られるようになります。具体的には大阪府河内地域、大阪府泉南地域、奈良県広域、兵庫県播州地域、三重県です。
おっしゃかしゃん型の手打ちは独特の節回しが付いているのがほとんどで、歌舞伎役者の浮世絵や歌舞伎・文楽の脚本に書かれる大阪手打ちはたいてい「おしゃしゃのしゃん」のような掛け声になっており、歌舞伎や文楽の中の芝居がかった大阪手打ちが原型なのかもしれません。
おっしゃかしゃん型の手打ちは大阪中心部から距離が充分に離れた九州などでは見られません。九州へは海路を通じて大阪の港からほぼ直接に伝わったため大阪手打ちの原型に近いのでしょう。
あるいは「方言周圏論」にのっとるなら、おっしゃかしゃん型手打ちの方がより古い大阪手打ちの形であって、現在の標準型の大阪手打ちの方が新しいものと考えることもできます。九州の手打ちはおっしゃかしゃん型手打ちが大阪中心部で衰退してから海路で伝わったとすれば説明できます。
いずれにせよ、大阪手打ちの地理的な分布は分かってきたので、次は時系列的な分布について明らかにしていきたいところです。
以下「おっしゃかしゃん」型の手打ちの例示
・泉南市樽井「しゃーんしゃん、もひとつしゃん、いおうてさんど、おおしゃかしゃんの、しゃーんしゃん」
・東淀川区柴島「うーちましょ、しゃーんしゃん、もひとつせい、いおーてしゃんの、しゃかしゃんの、しゃんとこせ、めでたいな、???」
・守口市天乃神社「しゃーんしゃん、いおーてしゃんの、おっしゃかしゃん、しゃんとこしゃんしゃんしゃん、もひとつかえして、いおーてしゃんの、おっしゃかしゃん、しゃんとこしゃんしゃんしゃん」
・神戸市西区野中「うってのけ、しゃーんしゃん、もひとつせ、しゃーんしゃん、いおうてみっつで、おっしゃかしゃんの、しゃーんしゃん」
・福崎町大門「うってのけ、しゃーんしゃん、もひとつせ、いおうてさんどーで、しゃんしゃんのーしゃん」
・御所市茅原・玉手「しゃーんしゃん、しゃんとこせ、もひとつせ、いおうてさんど、おーしゃーしゃんの、しゃんとこせ」
・東員町猪名部神社「さあさあうっておくれ、しゃーんしゃん、ほらもひとつせ、しゃーんしゃん、いおーてさんのおっしゃんしゃんのしゃん」
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- 2018/03/11(日) 01:58:30|
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