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「知恵の中山清閑寺」とはどこのお寺?

大阪の堺や貝塚などのふとん太鼓・太鼓台に親しんでいる方は太鼓台の唄に現れる「知恵の中山清閑寺」がどこのお寺なのか疑問に思ったことがあるんじゃないでしょうか。
これについて考察しているサイトは色々とありますが、私も一つ考えたのでブログに書き表しておこうと思います。

結論から言うと、知恵の中山清閑寺とは京都市東山区の歌中山清閑寺のことと推測します。


以下に私がそう考えるに至った理由を書いていきます。


まず、太鼓台の唄のおさらいです。

牡丹に唐獅子 竹に虎
虎追うて走るは和藤内
わとないお方に知恵貸そか
知恵の中山清閑寺
清閑寺の和尚さんは坊さんで
坊さんタコ食うてヘトついた



地域によって細部が多少異なりますが、だいたいこんな歌詞ですよね。
このタイプの尻取り唄は江戸時代後期に上方で成立し、明治以降は大阪市内で太鼓台や地車の囃子歌として広まっていました。
堺旧市で太鼓台の唄として広まるのは第一回堺まつり以降のようです。

歌詞を見ていくと一行目と二行目は有名な言い回しだったり有名なお話が下地にある歌詞であることが明白です。
「牡丹に唐獅子 竹に虎」は良いものの取り合わせかつ語呂がいいので昔からよく使われてきた題材ですし、「虎を追う和藤内」も国姓爺合戦という有名な物語の一場面です。
ということで他の部分もこの歌詞が考案された当時にはよく知られていた言葉だと推測します。
なのでセイカンジあるいはセイガンジというような名前の有名なお寺を探すと2件ありました。

一つ目は京都市東山区の清閑寺です。山号を歌中山といい、歌の中山として有名でした。
二つ目は誓願寺ですが、京都と大阪にあります。しかし「知恵の中山」とつながりそうなエピソードなどは見つかりませんでした。
歌中山清閑寺のほうが歌詞に含まれる可能性が高いんじゃないかなあ。

またほぼ同じ歌詞が大阪のあちこちに広まっていることから、各地のローカルなお寺を歌っているのではないことが分かります。
例えば貝塚の願泉寺(がんせんじ)とか枚方の誓願寺(せいがんじ)とか。



次に尻取り唄という観点から見ていきます。
太鼓台の歌の歌詞は基本的に尻取りになっているのが分かります。

牡丹に唐獅子 竹にトラ
トラ追うて走るはワトウナイ
ワトナイお方にチエ貸そか
チエの中山セイカンジ
セイカンジの和尚さんはボウサンで
ボウサンタコ食うてヘトついた


しかし「知恵貸そか」「知恵の中山清閑寺」の部分は尻取りにしては少し違和感があります。
尻取りの原則に沿うなら「知恵」ではなく「貸そか」から音を拾うはずです。

安永2年の『地口須天寳』に「……ものだの森の狐をうかそ うかそ中山せいがんじ……」という尻取りが載っていました。
「ものだの森の狐」とは「信太の森の狐」のことであり、「うかそ中山せいがんじ」は「歌の中山清閑寺」であることが想像できます。
昔の尻取りは今のように同じ音を取っていくだけでなく、ラップのライムのように韻を踏むこともあったようです。
そして韻を踏むためにある程度の言葉の変形が許容されていたようです。

「歌の中山清閑寺」が「うかそ中山清閑寺」に変形する例があることを確認したところで、太鼓台の歌詞に戻ってみると見えてくるものがあります。

わとないお方に知恵貸そか
知恵の中山清閑寺


「知恵貸そか」の部分ですが、これは発音では「チエカソカ」となりますが、きちんと文字で書くならば「チエカソウカ」です。
これを踏まえると、

わとないお方に知恵貸ソウカ
ウカソ中山清閑寺


というような歌詞が考えられます。尻取りの原則に沿うならこちらの方がふさわしいとも思います。

よって「知恵の中山清閑寺」は「歌の中山清閑寺」が尻取り唄という制約の中で変形に変形を重ねて生まれた言葉なのではないかと考えるに至りました。

しかし、昭和初期の時点ですでに「知恵の中山清閑寺」で歌詞が固定されていることが当時の複数の著作から伺うことができます(峰尾格(1934)『民謡の和泉』、上田長太郎(1937)『上方叢書第2篇 大阪の夏祭』、上方郷土研究会/編(1931)『上方―郷土研究―』創刊号など)。



余談になりますが、太鼓台やだんじりと「うかす」という言葉は相性がいいです。
現代でも「〇〇町の【だんじり/太鼓】は彫物ようて木もようて、かじてこ上手でよう浮かす」なんて囃子歌が残っています。
ここでの浮かすは太鼓台なら浮いているように軽々と担ぐとか、だんじりなら浮いているような速さで走るみたいな意味合いですね。


植木 行宣, 樋口 昭『民俗文化分布圏論』1994年のp365
京都のわらべ歌、手毬歌などが紹介されており、その中に見慣れた尻取り唄があったので引用します。

歌の中山清閑寺
清閑寺の和尚さん(おっさん)坊さんで
牡丹に唐獅子竹に虎
虎追うて走る和唐内
わとないお方に知恵貸そか
かそかに見える淡路島 縞の財布に五十両
五郎十郎曽我のこと
淀の川瀬の水車
車町じゅう はやりうた
注)わとない=気ばしりのない人。


「歌の中山清閑寺」と歌う尻取り唄の例です。
坊さん(ボンサン)→牡丹(ボタン)、貸そか(かそか)→かそか(微か)など尻取りの展開が大阪のものと異なるところも興味深いですね。
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